たまには時事ネタを書きましょうか。(笑)
数日前からのマスコミ報道通り、東芝はHD DVD方式から撤退すると発表しました。青紫色レーザを使用するディスク(いわゆる「次世代光ディスク」)はBlu-ray Disc方式に統一されることになります。
勝因・敗因として、政治的な話(ハリウッドの支持がどうこうとか)がいろいろ言われていますが、そういうのは他を見ていただくということで、ここでは技術的な話を。
CD、DVD、HD DVD、Blu-ray、どれも厚さ1.2mm、直径12cm(または8cm)のポリカーボネート製ディスクで、間違えそうなくらい(笑)見た目にはあまり変わりありません。使う光(レーザー)の種類は、CDが赤外線(波長780nm)、DVDは赤色(650nm)、HD DVDとBlu-rayは青紫色(405nm)です。波長の短い光のほうが細かい記録でも見ることができるわけですね。ここまではHD DVDもBlu-rayも大きな違いはありません。
では、HD DVDとBlu-rayは何が違うのか。右の図をご覧下さい。
ご存知の方も多いと思いますが、CDというのは印刷面(普通のプレーヤの場合、上にするほう)の直下にデータが記録されていて、下から樹脂を通して読み取るようになっています。(ですから、たとえ印刷面でもボールペン等で傷を付けてはいけません)
DVDとHD DVDは0.6mmのディスクを2枚貼り合わせて作られていて、記録層はちょうど真ん中あたりにあります。ちょっと珍しいですが、裏返して両面再生できるディスクも作ることができます。
Blu-rayはCDと逆で記録層は裏側(レーザー光を当てる側)に存在します。正確には0.1mm内側になります。
この記録面の深さ(CDは1.2mm、DVD/HD DVDは0.6mm、Blu-rayは0.1mm)を「カバー層の厚さ」と言いますが、これは薄いほうが大容量記録には有利になります。実際、HD DVDが15Gbyteしか記録できないところ、Blu-rayは25Gbyte記録することができるわけです。(同じ単層記録ディスクで比べた場合。もちろん、この差はカバー層の厚さだけが理由ではありません。)
しかし、カバー層を薄くすると、ディスク表面にわずかな傷が付いただけで読み取りが難しくなるという欠点が発生します。CDやDVDくらいカバー層が厚いと、多少の傷が付いていても傷には「ピントが合わない」状態になるために、支障なく読み取ることができるわけです。
Blu-rayも当初は傷に弱いのではないかと言われましたし、最初に登場したときはカートリッジに入れて使うようになっていました。その後、TDKのDURABISに代表される耐久性向上技術によって、DVDと同様に扱うことができるようになったと言われています。歴史に「もしも」は禁物ですが、万一Blu-ray陣営が耐久性の向上で苦戦していたら、HD DVDにも勝機はあったかもしれません。材料科学など、基礎研究の重要性を感じます。
でも、こういう話を知っていると、Blu-rayディスクを扱うとき、ちょっとだけ丁寧になりませんか?(笑)
先生、勉強になりました!
しっかし、一見マーケティング勝負のようで、技術力によって決まるって、ハイテクの難しさ。両方揃わないと勝てないですね。
そこをドコゾのMBAでたバカはマーケティングだけで勝てると勘違いするんですよね。
その意味で、Appleの復権はやはり技術(というかビジョンというか)が根底にあるなぁと思うことしきり。
投稿情報: たけちゃん | 2008年2 月19日 (火) 22:32
その通りですね。
こういうちょっとした技術的な飛躍が全体の勝負を決することって案外多いんじゃないかと思います。
投稿情報: 岡田 | 2008年2 月20日 (水) 00:49