2日連続でオペラ。今日は東京文化会館で東京のオペラの森「エフゲニー・オネーギン」です。
着うたに使っているくらい大好きなオペラを小澤征爾が振る、それも新制作(ウィーン国立歌劇場との共同制作)のお披露目ですから見逃すわけにはいきません。
演出はザルツブルク音楽祭などでも活躍する、ファルク・リヒター。昨日と同様、舞台を現代に置き換えた演出のようです。
幕が上がると、そこは雪景色。舞台遠方ではさんさんと雪が降り続いています。この雪(細かい発泡スチロールのようなものだと思います)が、黒バックの上に照明で浮かび上がり、とても美しい。農夫たちは労働者(道具箱を持ってますから、工員さんという設定でしょうか)に置き換えられていますが、生き生きした表情の現代の若者という感じです。助演の人たちのストリート・パフォーマンスも効果的。
今回、タチヤーナ役が直前にロクサーナ・ブリバンからイリーナ・マタエワに変更になり、どうなのかなと思ったのですが、そんな心配もタチヤーナの見せ場「手紙の場」で吹き飛んでしまいました。素晴らしいタチヤーナです。
第2幕のパーティーの場面は現代の(成金たちの、あまり上品とは言えない)パーティーという感じ。盛り上げ役のトリケがお立ち台で歌います。
決闘の場面は現代の設定にした場合どうするのだろう、と思いましたが、ここはマフィア風(?)の決闘立会人が2人に拳銃を渡します。これはちょっと無理があったかな?
第3幕は本当の上流階級の舞踏会という感じ。衣装や振る舞いが第2幕のパーティーとは対照的で、優れた演出効果が出ていたと思います。
全体として、とても美しく楽しい、充実したオペラでした。これはウィーンでも評判になるような気がします。
カーテンコールで出てきた小澤征爾さんは、ちょっとお疲れの様子。残念ながら「東京のオペラの森」は今年が最後になりそうですが、こういう高品質のオペラ制作を日本から発信する機会はなんとか形を変えてでも続けてほしいと思います。
なお、(今日は収録日ではありませんでしたが)この公演の模様は後日NHKで放送されるとのこと。テレビ映えしそうな演出なので必見ですよ。
2日連続して、オペラの「現代化」演出を見たわけですが、目指すものは対照的な気がします。敢えて言えば、昨日のアイーダは本家あってこその「アンチ・アイーダ」として演出家の強烈なメッセージを伝えるもの。一方、今日のオネーギンは新しい時代のスタンダードを目指すものというように感じました。
どちらにしても、オペラという分野で新しい演出が栄えるためには、歌手やオーケストラなどの音楽的な部分がきちんと守られていることが必要条件でしょう。そういう意味では昨日のアイーダも、今日のオネーギンも、ちゃんと「オペラ」として高い水準にあると思います。
【2008.6.19追記】7月18日のNHK教育テレビ「芸術劇場」で全幕放送されるようです。