渋谷オーチャードホールでオペラ鑑賞。今日は前から4列目・ど真ん中という特等席。こういう幸運はめったにありません。
お馴染み「アイーダ」ですが、普通のアイーダじゃありません。カリスマ演出家ペーター・コンヴィチュニーのアイーダ。「既成概念 を打ち破る」ことで有名な演出家なのです。
以下、演出についてのネタバレがあります。東京公演は終わりましたが、まだ22日の大阪フェスティバルホールの公演がありますので見に行かれる方はご注意ください。
舞台上には白い小さな部屋。衣装等を見ると、現代という設定のようです。
例えば第2幕の有名な凱旋のシーン。客席(2階バルコニー)に登場したアイーダトランペットが有名な凱旋行進曲を奏でる中、戦争に勝った連中はもはや正気とは思えぬ乱痴気騒ぎ。なんとプロンプターボックスの中の人にまでシャンパンを振る舞う始末。それが終わると、あきれ顔のアイーダが後片付け。このアイーダは「女奴隷」というより「メイドさん」という感じですね。
基本的にすべてのドラマはこの小さな部屋の中で進行します。よくありがちな豪奢なアイーダ(象が出てくるみたいな(笑))を期待した人にとっては、大変な肩すかしでしょう。
さて、この小さな部屋の壁も例外的開くときがあります。
第2幕の最後、捕虜たちが慈悲を求めるシーンでは、後ろの壁が開き、バンダと呼ぶには大きめのサブ・オーケストラ(管楽器主体)と合唱隊が、まるでコンサートのように並び、その前では副指揮者が堂々と指揮をしています。
一方、第4幕の最後、地下牢が閉ざされるところでは、アムネリス(アイーダの恋敵の王女様)が剣を振ると部屋の壁が崩れ落ち、その外側にはなんと都会の夜景(のスクリーン投影)。最後は死を暗示する曲の中、アイーダとラダメスは街の中へ消えていきます。
非常にメッセージ性のある演出です。テーマは愛と反戦でしょうか。こういう風に書くとなんか安っぽいですが、途中何度も涙がこぼれるほど感動したのは確かです。
今回が日本でのオペラデビューとなるキャサリン・ネーグルスタッド(アイーダ役)をはじめとする歌手陣(彼女以外の多くは、グラーツでこの演出が初演されたときのオリジナルメンバーです)は歌声が素晴らしいばかりではなく、演技のほうも大熱演。また、そうでなければ成立しない演出でしょうね。
しかし、カーテンコールで一番の拍手とブラボーを受けていたのは、やはり演出家コンヴィチュニーその人でした。(少しのブーイングも!)
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