セス・ロイド「宇宙をプログラムする宇宙」読了。
宇宙の中で、量子力学によるランダム性から複雑で組織だった構造(生命など)が生まれる理由を、宇宙全体を一つの巨大な量子コンピュータとみなすことで説明しています。職業柄、うなずける部分も多くて面白かったです。
本書の中でエントロピーの非減少をはじめとする過去と未来の非対称性、さらには自由意志の存在理由を、計算可能性の非決定性によるものとする記述があるのですが、ここで以前読んだチャイティンの「メタマス!―オメガをめぐる数学の冒険」にも同じような記述があったのを思い出しました。
こちらは数学基礎論をコンピュータの立場から扱ってる感じの本です。この本に出てくるゲーデルの不完全性定理などの証明は、現代の(つまりコンピュータというものを知っている)人間にとってはオリジナルの証明よりも直観的で判りやすいと思います。
どちらの著者もこの分野の第一人者で、宇宙論・数学基礎論・計算機科学といった分野に興味のある人にはお勧め。ただ、どちらの本も索引が無いのがちょっと残念ですね。
これと、僕的には、シュレディンガーの「生命とは何か」を合わせると、なんか完結の匂い。
生命体がエントロピー増大に逆らう存在である事実から始めて、彼は「非結晶構造体」としてのDNAの存在をワトソンクリックの20年も前に物理学的に予言するのだけど。
その非結晶構造体としてのDNAシーケンスから生まれた生命体が、言語という、こりゃまたエントロピー増大に逆らう「シンボル記述」体系を編み出し、その帰結として量子力学というか量子コンピュータを生み出す。
やはり人間存在そのものが宇宙の自己認識との思いを確信せざるを得ないです。
投稿情報: たけちゃん | 2008年7 月 3日 (木) 20:49
ふむふむ。シュレーディンガー凄いですね。
「生命とは何か」、(絶版みたいなので)古本屋で探してみます。
投稿情報: 岡田 | 2008年7 月 3日 (木) 22:14