新国立劇場でワーグナーの楽劇「ジークフリート」。もちろん、トーキョーリングの第2日(3本目)です。前回の「ワルキューレ」からずいぶん時間が経ちました。序夜と第1日の記事は下記リンクをご覧下さい。
トーキョーリングのキッチュでポップな演出はこの「ジークフリート」でも健在、というかさらにパワーアップしている感じです。
第1幕、まるでおもちゃ箱のようなミーメの家が大迫りに載って上がってきます。ジークフリートの部屋もぬいぐるみがいっぱいで小さい女の子の部屋のよう。ミーメがファーフナーの話をするときも、かわいい大蛇(?)のぬいぐるみを持っています。
さすらい人との問答の場面はまるでテレビのクイズ番組。ちょっとレトロなブラウン管式テレビにミーメやさすらい人が映し出されます。
ノートゥング(聖なる剣)を鍛える場面では、なんと剣の破片を包丁で切って、ミキサーにかけ、型に流し込んでレンジでチン。ワルキューレで出てきた赤いノートゥングが、ペパーミントグリーンの新型ノートゥングに生まれ変わります。
第2幕は大蛇に化けたファーフナーが住む森の中ですが、ここに貸別荘なのかホテルなのか、VACANCY(空室あり)のネオンサインの付いた建物。森では動物たち(着ぐるみを着た助演者)が楽しそうに歩き回りまり、別荘の中からミーメやアルベリヒがジークフリートの活躍を見守ります。特筆すべきは森の小鳥役の安井陽子さん。かわいらしい鳥の着ぐるみを着て、宙づりで空を飛んだり、最後は裸になったり(たぶん全身肌色タイツなんだと思いますが・・・)の大活躍。第3幕でも消防士の格好で再登場していました。
第3幕はいよいよブリュンヒルデ登場。ワルキューレと同じく愛馬グラーネはおもちゃの木馬。背後で燃えさかる炎(今回も本物の火です)はブリュンヒルデの目覚めとともに消火します。
新国立劇場の舞台装置を駆使した大がかりで原色鮮やかな演出。こんなに楽しいニーベルングの指環を見られるのは世界中でも東京だけでしょう。
今回のジークフリート、劇場からは事前に休憩込みで5時間55分と発表されていましたが、実際には6時間15分くらい。休憩とカーテンコールを除いた正味でも4時間半くらいで、これはこのオペラの一般的な上演と比べてもかなり長いほうだと思います。しかし決して間延びした演奏ではなく、大事なところをしっかり溜めて聞かせる感じで、饒舌な演出とも整合しているように思いました。
さて、来月はいよいよ「神々の黄昏」。いったいどういう「ラスト」を見せてもらえるのか、とても楽しみです。
上のスコアは第3幕から。ジークフリート牧歌でも有名なこのメロディが聞こえてくると、この長大なオペラも大詰め。あとは最後まで突っ走るだけという感じですね。