新国立劇場の「ニーベルングの指環」、通称トーキョーリングもいよいよ第3日(4本目)の「神々の黄昏」で最後です。今までの3作品については以下のリンクをご覧下さい。
初演を見逃したトーキョーリング、今回は2年計画で無事に見ることができました。見るだけでこういう達成感を与えてくれるオペラって他に無いでしょうね。
キース・ウォーナーの演出はこの「神々」でも饒舌で大掛かり。序幕のノルンたちはマッドサイエンティスト風の衣装で映画のフィルムを繋ぎ、ジークフリートとブリュンヒルデの家には例のファーフナーのぬいぐるみが置いてあります。「ワルキューレ」で舞台いっぱいの大きさだったブリュンヒルデの愛馬グラーネ(の木馬)は、いよいよ小さくなりポケットサイズくらい。アルベリヒは瀕死の病人として登場。「ラインの黄金」でスマートな水着姿を披露してくれたライン3人娘は、かなり老化した体型に(歌手の名誉のために書いておくと、そういう肉襦袢を着ているのです)。前三作の演出がうまく伏線になっていることが判り、思わずニヤニヤしてしまいます。最後、ジークフリートの遺体が焼却炉に入れられ、音楽が最高潮に盛り上がったところで(「ラインの黄金」の冒頭と同じ)映画の試写室の場面に変わりジ・エンドとなります。
相変わらず楽しく、長丁場を飽きさせない演出なのですが、今回は正直言って演出よりも音楽の凄さに圧倒されました。いまさら書くのも変ですが、この「神々の黄昏」というオペラの音楽は凄いですね。今回、初めて生で聞くことで、改めてそのことを認識できた気がします。もちろん若き指揮者ダン・エッティンガーの力も大きいでしょう。指揮者自身の成長なのか、曲との相性なのか判りませんが、昨年の2作に比べても今年の2作の指揮は素晴らしかったと思います。
歌手ではブリュンヒルデ役のイレーネ・テオリンの圧倒的なパワーが凄かったです。正直言って実演を見るまで「神々」のブリュンヒルデがこんなに大変な役だとは思っていませんでした。このオペラ、最後の20分くらいはブリュンヒルデの独演会って感じなんですね。
「ニーベルングの指環」という大作、CDやDVDでは何度も聞いたり見たりしていますが、初めて生で4作品を見て、やはり生で見ないと判らないこと、得られない感動があるのだなあと再認識した次第です。