2月22日は東京オペラシティ・コンサートホール(タケミツ・メモリアル)でマルク・ミンコフスキ指揮でレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル(グルノーブル・ルーヴル宮音楽隊)のコンサートに行ってきました。ピリオド・アプローチ(簡単に言えば曲が作曲された当時の構造の楽器を使い、当時の奏法で演奏すること)を特徴とするオーケストラですね。
事前の発表ではシューベルトの「未完成」とモーツアルトの「ミサ曲ハ短調」(大ミサ曲)という組み合わせでしたが、当日になって曲目追加があり、最終的にはアンコールも含めて、
- グルック:歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲(ワーグナー編曲版)(追加)
- シューベルト:交響曲第7番「未完成」
- シューベルト:交響曲第3番より第4楽章(アンコール)
- (休憩)
- モーツアルト:ミサ曲ハ短調
- モーツアルト:ミサ曲ハ短調より「クレド」(アンコール)
というプログラムとなりました。
冒頭、指揮者であり、このオーケストラの創設者でもあるミンコフスキが出てくると、曲を追加したことを英語で説明。このグルックの序曲は初めて聴きましたが、演奏会の口開けに相応しい雰囲気の曲で、ピリオド楽器の音に耳を馴染ませてくれます。
そして「未完成」。いきなり冒頭の弦の弱音の美しさ、管楽器の独特の響きに心を奪われます。第1楽章、第2楽章と、どんどん精神の中に入り込んでくるような、深い演奏でした。
個人的には一昨年、ウィーンフィルの公演でやはり素晴らしい「未完成」を聴いてますが、同じ曲でありながら、まったく別の側面を見せられたような気もしました。
後半のモーツアルト「大ミサ」、通常では独唱者4人(ソプラノ2・テノール・バス)と混声合唱で演じられる曲ですが、今回はソロの歌手10人(ソプラノ4人、アルト・テノール・バス各2人)のみで演奏されます。もしかすると室内楽的な響きになるのかなと思っていましたが、いざ始まってみるとまるで大合唱団が歌ってるような迫力と、緻密さを兼ね備えた素晴らしい演奏。普通に合唱を使うよりもずっと贅沢に感じました。
この演奏方法、ホールの特性にも合っていたのかもしれません。まるでタケミツ・メモリアルがヨーロッパの大聖堂になったように感じました。あのホール、天井の高さだとか、座席の並び方だとか、ちょっと教会っぽい雰囲気がありますよね。
10人のソリストはオーケストラ後方の少し高い台に乗って歌っていたのですが、曲ごとにソロを歌う人が前に出てきたり、順番が入れ替わったり、まるでオペラを見ているような楽しさもありました。オーケストラもソロパートを受け持つ奏者が立ち上がったり、古楽器のビジュアル的な面白さもあって、サービス満点。
終演後も大変に盛り上がり、まるでオペラのカーテンコールのようにソロ歌手一人一人、そしてオーケストラのパートごとに大きな拍手。アンコールには演奏したばかりのミサ曲から「クレド」の再演で再び大拍手。
ピリオド楽器、ピリオド奏法について私が勝手に抱いていたちょっとストイックなイメージを、良い意味で塗り替えるような、大迫力でとても楽しく、素晴らしい演奏会でした。