東京二期会、ペーター・コンヴィチュニー演出のヴェルディ「マクベス」、5月2日の公演に行きました。
コンヴィチュニーの演出では「アイーダ」と「エフゲニー・オネーギン」を見ていますが、やはり演出に注目してしまいますね。
この演出の主役は最初の場面に登場する「魔女」でしょうか。魔女の住処はちょっと汚い台所。カラフルで思い思いの衣装を着たの魔女たち。共通するのは鼻が尖ってることだけ。
女たちが「魔女」なのに対して、男たちは「軍人」。魔女がカラフルでそれぞれ個性的なのに対して、男たちは皆軍服で画一的。ただ、女性の中では唯一マクベス夫人だけが魔女ではなく、また途中から衣装も軍服。「男性側についた女性」を象徴しているのでしょうか。
マクベスや手下が人を殺すシーンでは、必ず魔女が登場して、けしかけるような仕草。人が死ぬ(殺される)たびに、血を象徴するような赤い紙吹雪が美しく飛び散り、魔女が舞台袖に置いた黒板に「正」の字を書いて死んだ人間の数を数えていきます。
このあたりのキッチュな演出、個人的にはキース・ウォーナー演出の「ジークフリート」を思い出したりしました。
圧巻はラストシーン。マクダフとの決闘でマクベスが倒れ、圧政の終わりを喜ぶ合唱の場面ですが、途中から次第に合唱の声が遠くなり、舞台前面に最初の「魔女の台所」のセットが入り、いつのまにかオーケストラや合唱の音が、台所のテーブルの上のラジオから流れてきて、魔女たちがニヤニヤ笑いながら聞いてそのまま幕。このあたり、舞台装置や音楽的、音響的処理が実に見事。深い感銘を受けました。
全体としては最初から最後まで仕切っているのは魔女(=女性)たち。世の中を動かしてるのは男だけど、男を動かしてるのは女ですよ、という感じでしょうか。ある意味とても明快な演出だと思います。
歌手では石上朋美さんのマクベス夫人が良かったです。また合唱も素晴らしく音楽的にも満足の公演でした。
コメント