今日(11月16日)は飯倉の聖アンデレ教会で行われた東京アートオペラの記念すべき第1回公演「トリスタンとイゾルデ」に行ってきました。
会場は教会の聖堂。正確に数えたわけではありませんが聴衆は150人くらいでしょうか(ブログを書いた後で情報を頂きました。250人だったそうです)。伴奏はオーケストラではなく、ピアノ、管楽器3人(オーボエ/イングリッシュホルン持ち替え、クラリネット/バスクラリネット持ち替え、トランペット)、オルガンという構成。
聖堂の入り口から奥(十字架のあるほう)へ花道のような通路を作り、それを左右から花道のほうを向いて聴衆が座るというスタイル。ピアノと指揮者は奥の右(劇場であれば上手)側に、オルガンの設置された入り口上のバルコニーには管楽器奏者が陣取ります。
字幕は前方と後方、2カ所にプロジェクタで投影。ちょっと良いなと思ったのは字幕がドイツ語と日本語の対訳になっていたこと。それほどドイツ語が判るわけじゃありませんが(笑)、言葉と文字がちゃんと繋がるのが面白かったです。
歌手は花道やバルコニーを自在に行き来して歌います。花道で歌うときは聴衆の目の前で大迫力、またバルコニーで歌うと遠方から聞こえてくるように。このバルコニーでの歌唱は第1幕冒頭の操舵手や、第2幕で見張りをするブランゲーネなど、大変効果的でした。
音楽的には、ピアノ+αの伴奏ということで聴く前に想像していたものとはかなり違う、オーケストラでの大規模な公演とは別の意味で「ちゃんと完成しているワーグナー」になっていたように思います。たった3人とはいえ、管楽器を加えたことも効果的だったのでしょう。また歌手の方々のレベルもとても高かったです。
普通の教会ですので、コンサートホールやオペラハウスのように外の音が完全に遮断されるわけでもなく、窓からの光で外の明るさが判り、また演出上の意図もあるのだと思いますが、ときどき聖堂の入り口を完全に開放して外の道路まで丸見えにしたり、そういう「ライブ」な要素も却って新鮮で面白かったです。
ある意味簡素な音楽(伴奏)にもかかわらず、衣装や演出はかなり本格的。ポップな衣装、チェスの駒、草間彌生さんの絵画、舞踏家の方(黙役)も交えて、いろんな要素があり、正直言って完全に意図を理解できたわけではありませんが、いろんな寓意が感じられて面白かったです。
チケットの値段からはまったく想像できない、大変に充実した公演でした。会場は変わりますがあと2回(11月30日・12月1日)公演があるようですので、行かれてみてはいかがでしょうか?