2月20日、東京芸術劇場コンサートホールで行われた「こうもり」の公演に行ってきました。石川県立音楽堂と東京芸術劇場の共同制作で、それぞれの会場で1回ずつの公演です。
コンサートホールにもかかわらず、舞台上にはオペラのセット。客席の前5列分の座席が外され、そこにオーケストラが入ります。私は前から9列目だと思って買ったチケットが、前から4列目になって、ちょっと得した気分です。(笑)
演出は佐藤美晴さん。舞台設定は現在(2014年)の東京。元の「こうもり」をご存知の方であれば、下記の配役設定を見ただけで面白さが伝わるのではないでしょうか。
- アイゼンシュタイン(ペーター・ボーディング):オーストリア人の証券ディーラー、東京在住
- ロザリンデ(小川里美):アイゼンシュタインの妻、元モデルの日本人(ロザリンデはモデル時代の芸名)
- アデーレ(小林沙羅):アイゼンシュタイン家の家政婦、ウィーン育ち(?)の日本人
- ファルケ(セバスチャン・ハウプマン):オーストリア人の証券ディーラー、アイゼンシュタインの友人
- アルフレード(ジョン・健・ヌッツォ):ファッションデザイナー、ロザリンデの元彼
- オルロフスキー(タマラ・グーラ):イベントプロデューサー
- ブリント(新海康仁):日本人弁護士
- フランク(妻屋秀和):国際派の警部
- フロッシュ(西村雅彦):警部補
- メラニー・ホリディ:パーティーのスペシャルゲスト
第1幕の冒頭、アデーレに届くパーティーのお誘いは、手紙ではなく、スマホへ届くメール。ファルケとアイゼンシュタインはスマホ越し(?)に二重唱。アデーレとロザリンデの掛け合いも楽しく、この演出の世界へ引き込まれます。
第2幕、オルロフスキーが主催するのは「ウィーン風セレブ・パーティー(日本語禁止)」という設定。合唱(武蔵野音楽大学合唱団)の人たちも歌だけではなく、モデル役や給仕役など演技面でも大熱演。サプライズゲストにフォルクスオーパー往年の大スター、メラニー・ホリディ(もちろん本物)登場で、舞台上も客席も最高潮に盛り上がります。
第3幕の前半はフロッシュ役西村雅彦さんのアドリブ、直前に起きたクラシック界を揺るがす事件や、ちょうど行われているオリンピックの結果なども交え、スリリングでタイムリーなトークが炸裂。フランクも楽しい演技で、オペラ歌手の別の面を見たような気がしました。
演出面に注目してしまいますが、音楽的にもトップレベルの公演。歌手も粒ぞろいで、特に日本人歌手が良かったと思います。メラニー・ホリディさんの歌が聴けたのにも感激ですね。
オーケストラはハンス・リヒター(ブラームスやワーグナーの時代の有名な同名指揮者の曾孫さん)の指揮する東京交響楽団(金沢公演はオーケストラ・アンサンブル金沢)。ピットに潜ってしまう通常のオペラ公演とちがって、オーケストラが客席と同じ高さで、指揮の様子などもよく見えて、こういう方式もなかなか面白いなと思いました。
文句なく楽しいサービス満点の公演で、本当にいっぱい笑いました。