新国立劇場「ローエングリン」

Nntt_Lohengrin新国立劇場2011-2012シーズンの最後を飾るのはワーグナーの「ローエングリン」、6月4日の公演に行ってきました。3月の「オランダ人」と同じ、マティアス・フォン・シュテークマンによる新演出です。

この公演の目玉はなんといってもタイトルロールを演じるクラウス・フロリアン・フォークトでしょう。第1幕、ローエングリンが登場して一声発しただけで、そのなんとも言えない澄み切った声で劇場の空気ががらっと変わります。いわゆる名テノールと言われる歌手の典型的な声とも違う、フォークトだけが出せる声かもしれません。まさに異界から白鳥に乗ってやってきた騎士に相応しい歌声だと思いました。

また、エルザを演じたリカルダ・メルベートも良かったです。歌声が素晴らしいだけではなく演技力もあり、「ちょっと頭のおかしい女」という感じだったエルザが、ローエングリンが登場した瞬間「恋する乙女」に変化する様子など、なかなかの見物でした。

シュテークマンの演出は衣装なども含めてあまり特定の時代を感じさせないもの。シンプルなセットの後方にアクリルのタイル風ブロックが配置され、ここに比較的ぼんやりした映像が投影されます。説明しすぎない、抽象的・多義的な演出ですが、決して難しいものではなく美しい光の芸術として楽しむことができました。またシンプルなだけではなく、空から吊られた白鳥に乗って登場するローエングリンや、大迫りを使った場面転換など大胆な舞台効果も要所要所で効果的に使われていました。

オーケストラを指揮するのはバイロイトなどでも活躍する名匠ペーター・シュナイダー。あまり急がず、しっかりと物語を進めていくような指揮で、長いオペラを最初から最後まで堪能することができました。

歌手、演出、音楽というオペラの三拍子が揃った、世界のどこに出しても恥ずかしくないレベルの高い公演だと思います。また、みなさんよくご存知のようで、平日の昼間の公演にもかかわらず客席はほとんど満席。そんな光景を見るのも特に震災以降久しぶりな気がして、そういう面でもなんだか嬉しくなりました。